よくあるクレーム対策・解決策

包材トラブルイメージ
包材トラブルイメージ

日本の包装市場は、世界でも類を見ないほど「見た目」と「使い勝手」に厳しいのが特徴です。今回は、よくあるフィルムトラブルに対し、「資材スペック(調達視点)」「現場運用(製造視点)」の両面からアプローチする解決策をまとめて見ました。

1. 最大の敵「ピンホール(穴あき・液漏れ)」への挟み撃ち対策

「穴が開いた!」というクレームは、原因が資材(フィルム強度)なのか、物流(輸送振動)なのかで揉めがちです。両面から対策しましょう。

【調達(バイヤー)のアクション】

  • 「厚み」ではなく「樹脂」を変える

    • コストアップになる「厚み増」は最終手段。まずは、シーラント層(内面)を「メタロセン系LLDPE」などの高強度グレードに変更できないかメーカーに打診しましょう。厚みはそのままで、突き刺し強度が劇的に上がります。

  • 耐寒グレードの検討

    • 冬場の破損が多い場合、フィルムが低温で硬化している可能性があります。冬場だけ「耐寒性グレード」に切り替えるのもプロの選択です。

【製造(現場)のアクション】

  • 「箱詰め」の隙間チェック

    • 日本の長距離輸送は過酷です。段ボール内でパウチが動いて擦れていませんか? 仕切り(パット)を入れる、詰め方を互い違いにするなど、「摩擦を減らす」工夫だけで解決するケースが多々あります。

2. ライン停止を防ぐ「シール不良・機械適性」の最善策

「機械が悪いのか、フィルムが悪いのか」の犯人探しをしている間にも、ロスは積み上がります。

【製造(現場)のアクション】

  • 温度以外の「圧力・汚れ」を確認

    • シール不良時、すぐに温度を上げていませんか? 実は「シールバーの汚れ(焦げ付き)」「圧力バランスのズレ」が原因なことが多いです。温度を上げすぎるとフィルムが縮んで逆に漏れやすくなります。

  • 噛み込み限界の把握

    • 粉末や液体がシール部に付着するのは、ある程度避けられません。「どこまで汚れてもシールできるか」をテストし、限界を超えているなら資材側にバトンを渡しましょう。

【調達(バイヤー)のアクション】

  • 「混入物などのシール性」の高いフィルムを選定

    • 現場で噛み込みが避けられないなら、汚れに強い特殊シーラントフィルムを採用しましょう。良品率改善で、トータルコストは下がります。

  • 季節ごとの「滑り性」調整

    • 夏はベタつき、冬は滑らない。これはスリップ剤の特性です。資材メーカーと相談し、夏用・冬用で処方を微調整してもらうことで、一時停止を劇的に減らせます。

3. 消費者心理を守る「外観・臭気・使い勝手」

「中身は無事でもクレームになる」のが日本市場。ここは企業のブランド力を守る投資が必要です。

【共通のアクション:品質の「見える化」】

  • 異物誤認(フィッシュアイ)対策

    • 樹脂の焦げ(黒点)は、消費者には虫に見えます。「画像検査機を通した原反」を指定するか、製造ラインに検査機を導入するか。コストはかかりますが、回収リスクを考えれば安い保険です。

  • 臭気(残留溶剤)対策

    • チョコレートや油脂製品は、フィルムのインク臭を吸います。「ノンソルベントラミネート」「水性インキ」への切り替えは、臭い対策になるだけでなく、SDGs(環境配慮)のアピールポイントにもなります。

【これからの課題:高齢化対応】

  • 「開かない」は品質不良

    • 30代・40代には簡単に開けられても、高齢者には開けられない袋が増えています。

    • レーザー加工(マジックカット等)や、イージーピール(易開封)フィルムの採用は、決して贅沢ではありません。「リピートしてもらうための機能」として、商品開発会議で提案しましょう。

まとめ

包装資材のトラブル解決において、最も効果的なのは「三位一体の話し合い」です。

  1. 食品メーカー(現場): どのような充填条件で、何が起きているか伝える。

  2. 食品メーカー(調達): コスト感を踏まえつつ、最適な素材を探す。

  3. 資材メーカー(サプライヤー): 専門知識で「処方箋」を出す。

トラブルが起きた時、メールだけでやり取りしていませんか?
資材メーカーの技術者を工場に招き、現場と調達担当が一緒に機械の前で話し合う時間を作ってみてください。

「あ、それなら設定を変えずに、フィルムのこの数値をいじれば直りますよ」
「今の機械の設定なら、逆に安いフィルムでもいけるかもしれません」

そんな打開策が生まれるのは、必ず現場です。
各々の垣根を越えて、強い商品づくりを進めていきましょう!


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