冷凍ピンホール・破袋

冷凍用途で“割れるパウチ”が発生する原因と対策

堀口

11/19/20251 min read

冷凍パウチのトラブルイメージ
冷凍パウチのトラブルイメージ

「配送された冷凍商品を箱から出したら、袋が破れて中身が出ていた」
「冷凍庫に入れておいたら、いつの間にか袋に穴が開いていた」

いわゆる「冷凍破袋(はたい)」「ピンホール」の問題です。
たかが袋・されど袋。包材の破損はフードロスに直結するだけでなく、ブランドの信頼を損なう重大なリスクです。

今回は、なぜ冷凍用途でパウチが割れてしまうのか、その「原因」と、明日から見直せる「対策」について、専門用語を噛み砕いてわかりやすく解説します。

なぜ冷凍すると袋は「割れる」のか?

まず、根本的な原因を一言で言うと、「プラスチックは寒くなるとガラスのように硬く、脆(もろ)くなるから」です。

多くのプラスチック素材には、「ガラス転移点」という温度の境界線があります。この温度を下回ると、柔軟性が失われ、衝撃に対して非常に弱くなります。

では、具体的にどのような状況で割れが発生するのでしょうか。大きく分けて3つの要因があります。

①頻繁:コストダウンを意識するあまり、冷凍に向かない材質を選んでいませんか?

  • CPP(無延伸ポリプロピレン):透明性

  • 単層フィルム:強さ

②寒い:例えば、冷凍の唐揚げ、魚の切り身、ブロック肉、硬い野菜など。これらは凍ると石のように硬くなり、エッジ(角)が鋭利になります。
輸送中の振動で、中身が内側からフィルムを突き破ってしまうケースです。

③冷凍状態のパウチは、少しの衝撃でも致命傷になります。

  • 一部

  • トラック輸送中の振動

  • 荷役時の落下

「割れない袋」にするためには、コストとのバランスを見ながらスペックを見直す必要があります。

対策①:最強の組み合わせ「NY/LLDPE」を選ぶ
  • NY(ナイロン): 突き刺し強度、衝撃強度、耐寒性に優れています(外側のガード役)。

  • LLDPE(ポリエチレン): 低温でもシール性が良く、柔軟性があります(内側の接着・クッション役)。

もし現在、OPP/CPP構成や、PE単層を使っていて割れが発生しているなら、迷わず「ナイロンポリ(NY/PE)」への切り替えを検討してください。コストは上がりますが、クレーム処理のコストを考えれば安い保険です。

対策②:厚みを上げる(特にPE層)

材質を変えられない、あるいは既にナイロンポリを使っているのに割れる場合は、「厚み」を見直します。
一般的に、冷凍用途では総厚で60μm〜80μm(ミクロン)以上
60μm

特に内側のLLDPE層を厚くすることで、クッション性が増し、内側からの突き刺しや落下衝撃に強くなります。「今の70μmを75μmにする」だけでも、劇的に改善することがあります。

対策③:袋の形状を工夫する(Rカット・ノッチ位置)

意外と見落としがちなのが形状です。

  • コーナーカット(R加工): 袋の四隅が尖っていると、段ボール内で隣の袋を突き破る原因になります。角を丸くする加工を入れるだけで、輸送中の破損リスクが減ります。

  • ノッチ(切り込み)の位置: 開封用のノッチがシール部分に食い込みすぎていると、そこから裂ける原因になります。

まとめ:コストと安全のバランスを見極めよう

しかし、冷凍包材において「過度な薄肉化」や「不適切な材質選定」は、後になって数倍のコスト(回収、返金、信用失墜)として跳ね返ってきます。

  1. 素材は「ナイロンポリ」が基本

  2. 厚みはケチりすぎない

  3. 中身の硬さ(鋭利さ)に合わせてスペックを決める

この3点を押さえておけば、冷凍破袋のトラブルは劇的に減らすことができます。
もし現在の包材でトラブルが続いている場合は、一度包材メーカーに「冷凍耐性のある構成」での見積もりを依頼してみてはいかがでしょうか?